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「極似」する和歌 -「白紙撤回」どころか秀歌との評価-

台風18号は去った後も記録的な大雨を残しました。

川の氾濫による浸水被害。 夜になってどんなに心細いことでしょう。
 とり残された人も無事に救助されるよう 祈るばかりです。



かるた (1)

 「百人一首」91  (『新古今集』秋下518)

きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む
     キリギリス ナクヤシモヨノ サムシロニ コロモカタシキ ヒトリカモネン                 


この和歌の作者は、後京極摂政前太政大臣。長い名前で書かれていますが、
鎌倉初期に大臣だった藤原良経(よしつね)です。

この方は、高い身分であっただけでなく、歌人としての才に長けた人でした。 

 
きりぎりす」とは、今の 「こおろぎ」のこと。
また、「衣かたしき」とは、着物の片袖を敷いて寝る状態。つまり、ひとり寝を
意味しました。


歌意は、
こおろぎが鳴いているよ。霜のおりた夜の寒々としたむしろに、私は着物の
 片袖を敷いて、一人寂しく寝るのであろうかなあ。



さて、この歌より前には次のような歌が詠まれていて、よく知られていました。



書 (1)

あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜を ひとりかも寝む
アシビキノ ヤマドリノオノ シダリオノ ナガナガシヨヲ ヒトリカモネン
我が恋ふる妹は逢はさず玉の浦に衣片敷ひとりかも寝む
ワガコウル イモワアワザズ タマノウラニ コロモカタシキ ヒトリカモネン
さむしろに衣かたしき今宵もや恋しき人にあはでのみ寝む
サムシロニ コロモカタシキ コヨイモヤ コイシキヒトニ アワデノミネン
さむしろに衣かたしき今宵もやわれを待つらむ宇治の橋姫
サムシロニ コロモカタシキ コヨイモヤ ワレヲマツラン ウジノハシヒメ

「極似」する箇所を 色で 確認してみて下さい。

きりぎりす鳴くや霜夜の さむしろに衣かたしき ひとりかも寝む



これでは、上の句(1、2句)のみ独自のものといえませんか。残りの句は真似
だと。

いや、これが現代であればパソコンで検索機能をかけると 上の句にも「極似」
する表現が現れそうですね。



こんなに分かりやすく真似した句を詠みこんで、よく問題にならなかったものだ
と思いませんか。

 このような「真似」ばかりで構成されたような歌が、なぜ後鳥羽院が召した
「百首歌」に詠進したのでしょうか。また、

藤原定家も「百人一首」 に採っているのですから、この歌を 評価していると
いうことです。




実はこれも和歌の表現技巧のひとつ、「本歌取り(ほんかどり)」という手法。


「へぇ~ 、それで いいのぉ~!?」と、言いたいですよね(笑)

貝合わせ

この歌には「本歌(ほんか」の恋の情趣を漂わせながら、孤独なひとり寝の
わびしさが詠まれています。

そのわびしさが晩秋の寂寥感と一つになり、つまりは「暮れていく秋の寂し
さ」を詠んだ歌になっているといえましょう。


作者は、歌人ならば誰もが知っている 和歌をわざわざ詠み込んで、それらの歌の
もつ世界も自分の歌にとり取む という手法なので、読む人たちもまたよく知る歌
が「本歌(もとうた)」でなければなりません。

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プロフィール

Keiko

Author:Keiko
写真:【 唱歌:「案山子」の立つ見沼氷川公園】

こんにちは! 日本古典文学
研究に従事しているものです。
子育てがほぼ終了という頃に
大学院に入学、現在は 古典
文学講座の講師をしています。

こちらには 自然と文化と歴史
を感じながら‘知るを楽しむ’
日常を記しています。         
     

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