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花の散るらむ


「桜の花も、もうほとんどが散ってしまった中で、まだ咲き誇っている大きな木が
一本だけあるんだ。それが朝日を受けて実に綺麗なんだけれど、あの桜は種類が違う
のだろうか」と、ここ2、3日夫がしきりに言うので、今朝出掛ける際に、

「その桜を撮って、メールで送ってみて」
 
と頼んだところ、この写真が2枚届いた。

桜1       今日の桜 同じ桜の木。



なるほど、他の桜はもうほとんどが葉桜になっているころなので、余計に目立って
人の目を引いているようだ。




もう先週のことになるが、、昔の教え子で、今ではもう友人という方が相応しい方から
お誘いを受けて千葉に出掛けることがあった。

彼女の思い出の町南柏で、駅周辺の公園の桜や街路樹の桜、それに麗澤大学の構内で、
今年最後の桜見物を満喫した。

もう一週間以上前になるのだが、その時すでに、時折吹く春風に桜の花びらは、はら
はらと散っていた。

街路樹の桜     花びらの吹き溜まり





     麗澤構内の桜

桜の散る風景の中で、雪のように降る花びらを帽子で受けようと夢中になっている
女の子に出会った。

麗澤大学も獨協大学と同じようにオープンカレッジが盛んなようで、こちらに住んで
いたことがあるその方は、その頃息子さんを高校に送り出した後に大学へ通って講座
を受けていたのだそうで、懐かしい思い出話が、桜が散りゆく風景をよりのどかで
心和むものにしていた。


同じその日、帰宅すると<かすかべの小町>さんから写真を添付したPCメールが
届いていた。





-(略)-

桜は日本人にとって特別な花ですね。
桜が咲く頃になると、花見の事が気になりだします。

神社の横に公園があり、そこにも桜が見事に咲き誇っています。
今日は私、独り占めでした。


     花の散るらむ

東から朝日がさす中、桜の花びらがゆらり、ゆらりと舞い降ります。

また少し強い風に煽られ、紙吹雪のように舞い散ります。そして、花びらの絨毯の上
には幻想的な世界が広がります。

 ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ 
(日の光がのどかにさしているこの春の日に、どうして落ち着いた心もなく桜の
花は散り急いでいるのであろうか)

の歌が、口をついて出ました。

 花の舞い散る様子は風流なのですが、散りゆく桜が惜しまれます。

枝を見上げたとたん、思わず涙が流れ落ちました。

こぼれ落ちた花の後に、緑の若葉が少しのぞいていて、
瞬時に先日4月7日のブログのお話が思い出され合わされたからです。

芽生えてくる生命に感動しました。
散るものもあれば、芽生えてくるものもあるのだということを、
あらためて、心にきざみました。
           ー かすかべの小町ー






その後 間もなく雨風の強い日を最後に、どこの桜ももう咲き終わっていると思われる。


桜の風景は、眺める者の状況や心理状態によって異なった感動を与えるものだという
ことを再確認させられたのだが、この記事を書くにあたり写真を整理していて、気づ
いたことがあるのでここに記しておきたい。



今から838年前の話になる。自叙伝的物語『問わず語り』の中にある場面であるが、
作者でもある二条(にじょう)さんが「西行が修行の記」という絵と、そこに書かれ
ている歌を読んだことを思い出し、自分も西行のようにこの世を捨てて、諸国行脚に
出たいと強く願ったというのだ。

その絵は、山を背景に川が流れていてそこに桜の花が散りかかっていて、

風吹けば花の白波岩越えて渡りわづらふ山川の水 
(風が吹くと桜の花がぱっとあたりを覆うほど沢山舞い散って、川の水は花の白浪と
なり岩を越えるので、渡りづらい山川の水よ)

と西行が詠んでいる有様が描かれていたという。

わたしはこれまで、「西行が修行の記」というものは、修行者の風流を愛する心を
風情ある風景で描いたものとしか想像せずに、その時の二条さんが、この桜の散る
絵を見て、絵の風景に重ねていた想いまでには考え至らなかった。

この時のことを、作者は、「俗世間を捨てて風流を愛する生き方を選んだ西行への
憧れ」とは言うけれど、二条自身が絵の風景に見たものは、散りゆくものの悲しみ
であり世の無常であることへの観念であったにちがいない。

なぜならば、14歳で天皇(院)に愛されて愛妾となり、翌年に頼みにする最愛の
父親を病で亡くしてしまう。(母は2歳のころに亡くなっていた。)

16歳で天皇の子を出産するけれど、父に代わって後見人となってくれた叔父の邸
で育てられていた我が子は、僅か8ヶ月で消え入るように亡くなってしまった。

この場面はその後のことだったのである。

花の散るは、花の終わり。命の終わりへの思いは、何時の世も変わりはないにちが
いない。




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桜散る

<かすかべの小町>さんの感性豊かなメールを拝見し、私も涙がこぼれるほどの桜を見たこと、思いだしました。

孫の野球の試合を見に行った校庭で、一陣の風に無数の花びらが舞い散り、まるでこの世のものとは思えない光景に一瞬、今どこで何をしているのかわからなくなり、散る桜と、その前で繰り広げられている野球の試合をぼんやりと、ただ眺めていました。
子供たちの歓声で我に返ると、桜はもう静かにはらはらと散っていました。

百人一首の≪花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり≫を見るたびにいつもこの光景が思い浮かびます。

今日、久しぶりにさだまさしの≪桜散る≫を聴きました。

生きる力がみなぎるような新緑の季節がやってきますね。<かすかべの小町>さんの世界に浸った一日でした。

Re: 桜散る

<しなの乙女>さんの感性も、<かすかべの小町>さんに劣らず、豊かですねぇ。

ちなみに、

> 百人一首の≪花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり≫を見るたびにいつもこの光景が思い浮かびます。
>
この歌の作者は 入道前太政大臣・藤原公経(きんつね)ですが、この方は『とはずがたり』に
二条さんの恋人で登場する<雪の曙>の曾祖父なんですよ。西園寺家の祖で、藤原定家の義弟
にあたる方です。
プロフィール

Keiko

Author:Keiko
写真:【 唱歌:「案山子」の立つ見沼氷川公園】

こんにちは! 日本古典文学
研究に従事しているものです。
子育てがほぼ終了という頃に
大学院に入学、現在は 古典
文学講座の講師をしています。

こちらには 自然と文化と歴史
を感じながら‘知るを楽しむ’
日常を記しています。         
     

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