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∞貴族の食文化∞  ちょっと気になる「いもまき」

平安時代の食事は朝夕二度で、巳の刻(午前十時)と申の刻(午後四時)と定め
られていました。


貴族の食膳 
『新訂国語図説』より

貴族の食膳は豪勢なものだったのですね。味付けは素朴で、塩・酢・醤(ひしお)
という味噌に似たものなどをつけて食べたということです。

庶民の食事となると、玄米に青菜汁、漬物、塩(あら塩)と・・・これだけ?

随分な違いに驚かされます。労働量の多い下級役人や庶民は「間食(かんじき)と
いう中間の食事をとることが多かったということですが、特に庶民の場合などそれも
また大したものではなかったのだろうと想像されます。

貴族たちも、さすが二度の食事では空腹を覚えるようで、間食として「くだもの」と
呼ばれた菓子や果物をたべていたようです。

古典文学のなかで「くだもの」とあるのはむしろ菓子、餅だんごのような類をいった
ものが多いのです。


とわずがたり』の巻一に、病床の父親が ずっと側に付き添う懐妊中の娘の身を案じ、
間食を娘に与えるよう家人に申しつける場面があります。

明けゆく鐘の声聞こゆるに、例の下に敷くおほばこの葉の蒸したるを、仲光持ちてまゐ
りて、「敷き替へむ」と言ふに、「今は近づきておぼゆれば、何もよしなし。何まれ、
まづこれに食はせよ」と言はる。


自分はもう死期が近づいたように思われるから、何をしても無駄だ。何でもいいから
まずこの娘に食べさせるようにと父は言うのです。

そこで、間食が運ばれますと、


いもまき といふ物をかはらけに入れて持ちて来たれば、「かかるほどには食はせぬ
物を」とて、よに悪げに思ひたるもむつかしくて、まぎらかして取りのけぬ。


侍女が、いもまき というものを素焼きの食器に入れて持ってくると、父は、
「こういう懐妊中には食べさせないものを」といって、たいへんよくないことのように思っ
ているので、めんどうにも思いまぎらかして下げさせてしまいます。



この「いもまき」って、どんな食べ物だったのでしょうか。ずっと、気になっていて調べて
みたのですが・・・そして、再現してみたのですが・・・、こんなものでしょうかね。


藤原定家の日記『明月記』にも登場する「芋巻」ですが、「芋籠(いもごみ)」の異名とい
う説もあります。


「米の粉に、芋をすり合わせて混ぜます。そこに甘味料を加えて延ばした中に餡を巻き
蒸した菓子」ということですので、

こねる 米粉は上新粉、山芋をすって混ぜる。


餡を巻く 餡を巻きます。巻くというので巻物の形です。

蒸す 蒸します。

いもまき こんな感じに出来上がりました!長だんご?

中身は、

中身 こんな感じです。


こんなものだったのかな。米粉は、上新粉のように真っ白ではなかったはずだから、色はもっと
茶系かも・・・。

翌日には、ちょっと硬くなった。懐妊中ものに「食わせぬものを」というのは、ソレ??




『聞き書 ふるさとの家庭料理第6巻だんごちまき 』(農文協編)という本に
「いもまき」なる名の食べ物はないかとみてみたのですが、同名はありませんで
した。参考になるものとして、


徳島県のものに、

まき
これ、「まき」。材料は【小麦粉/塩/よしの葉/しゅろの葉のひも】

(「まき」とつくからには、何かで巻くのかもしれないなぁ。私はうまく巻け
ないので、ラップでまいちゃったんだけど・・




静岡につたわるもの、

いももち
これ、「いももち」

材料【小米/里芋/さつまいも】

「秋のとり入れの忙しいころ間食としてつくる。腹をすかして学校からかえる子
どもたちのおやつにもする。」という説明文が『とわずがたり』の場合に近いかな。




「懐妊しているときには食べさせないものを」という言葉がひっかかりますが、

「いもまき」のイメージは出来てきました。

文字で記された場面の中で、一つの品が現実の形あるものとして捉えることができ
ますと、その状況が立体的なかたちをもって立ち上がってくるように感じるのです。

また、その場面が よく理解できたように感じて うれしくなってきます。

こうした日常の中で、非日常的な作業を、わくわくしながら楽しんでみました。





〓お知らせ〓

『とはずがたり』公開講座の私訳・解説の並べ替えをしました。

新しい内容が始めに出るようになっています。講座では、巻一、<一九>まで終わって
いますが、その先の<二三>まで載せました。

ここ(←クリック)から、ご覧いただけます。

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Keiko

Author:Keiko
写真:【 唱歌:「案山子」の立つ見沼氷川公園】

こんにちは! 日本古典文学
研究に従事しているものです。
子育てがほぼ終了という頃に
大学院に入学、現在は 古典
文学講座の講師をしています。

こちらには 自然と文化と歴史
を感じながら‘知るを楽しむ’
日常を記しています。         
     

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